SWOT分析とは

SWOT分析は、自社の状況を、強み(Strength)・弱み(Weakness)・機会(Opportunity)・脅威(Threat)の4つの欄に分けて整理する方法です。SWOTという名前は、この4つの英語の頭文字を取ったものです。

4つの欄は、2つの軸で分かれます。1つは、自社の内側のこと(内部環境)か、外側のこと(外部環境)か。もう1つは、自社にとってプラスに働くか、マイナスに働くかです。

SWOT分析は、内部と外部、プラスとマイナスの2つの軸で分ける プラスに働く マイナスに働く 内部環境 (自社の内側) 外部環境 (自社の外側) 強み(Strength) 例:当日中に見積もりを返せる 弱み(Weakness) 例:店の立地が悪い 機会(Opportunity) 例:健康志向の人が増えている 脅威(Threat) 例:商圏の少子高齢化が進んでいる 4つの欄に並ぶのは、いまの状況。どんな打ち手をとるかは、表を書き終えたあとに選ぶ
図1:SWOT分析の4つの欄。内部環境と外部環境、プラスとマイナスで分ける。弱みと脅威の例は中小企業基盤整備機構『マンガでわかる「SWOT分析」』から。強みと機会の例は筆者が作った。

SWOT分析は、1960〜70年代にスタンフォード研究所のアルバート・ハンフリーが考えたと紹介されることがあります。ただ、ハンフリー自身は発案者だと主張しておらず、起源ははっきりしていません(Wikipedia「SWOT分析」)。

中小企業基盤整備機構(中小機構)は、事業計画書を作る前に会社の状況を把握する方法の1つとして、SWOT分析を紹介しています。

SWOT分析をすることで、事業の戦略方針が明確になり、事業計画書に説得力が生まれます。

出典:中小企業基盤整備機構『マンガでわかる「SWOT分析」』(最終更新日:2025年9月8日)

ここで押さえておきたいのは、SWOT分析の表は、戦略を決めるための材料であって、戦略そのものではないということです。4つの欄には、いまの状況が並びます。そこからどんな打ち手をとるかは、表を書き終えたあとに選びます。ただし、何を決めるための表なのかは、書く前に決めておきます。この順番が、第4章と第7章の話につながります。

内部と外部は「自社で変えられるか」で分ける

SWOT分析を書き始めると、各項目を内部(強み・弱み)と外部(機会・脅威)のどちらに書くかで迷いがちです。特に、弱みと脅威は混同しやすい項目です。

中小機構は、内部と外部の分け方を次のように説明しています。

内部環境は「自社が原因のもの、自社が持っているもの、頑張ればなんとかなるかもしれないもの」であり、外部環境は「影響を受けるだけで、自社の力では変えようがないもの」と考えると良いでしょう。

出典:中小企業基盤整備機構『マンガでわかる「SWOT分析」』

同じページでは、例も挙げています。「店の立地が悪い」は、移転すれば変えられるので内部の弱みです。「商圏の少子高齢化が進んでいる」は、自社では変えられないので外部の脅威です。

内部か外部かは、自社の力で変えられるかで分ける 書きたい項目 自社の力で 変えられるか はい いいえ 内部(強み・弱み) 例:店の立地が悪い(移転できる) 外部(機会・脅威) 例:商圏の少子高齢化が進んでいる 機会と強みも同じ。「健康志向の人が増えている」は外部の機会、「低糖質の商品を作る技術がある」は内部の強み
図2:内部か外部かの分け方。中小企業基盤整備機構『マンガでわかる「SWOT分析」』の説明(自社の力で変えられるか)と例をもとにした。機会と強みの例は筆者が作った。

強みと機会も、混同しやすい組み合わせです。「健康志向の人が増えている」は外部の機会で、「低糖質の商品を作る技術がある」は内部の強みです。2つは関係していますが、別の欄に書きます。機会と強みを1つの欄にまとめてしまうと、あとで「どの強みを、どの機会に生かすか」を掛け合わせるときに、掛け合わせるものがなくなります。

迷ったときは、その項目を自社の力で変えられるかを問えば、内部か外部かを分けられます。 変えられるなら内部、変えられないなら外部です。

SWOT分析を使う場面

SWOT分析は、会社全体の状況をつかむときだけに使うものではありません。新しい商品を考えるとき、採用がうまくいかないとき、広告を始める前など、何かを決める前の場面ごとに使えます。中小機構も、新製品の開発なら「製品」、採用がうまくいかないときは「採用」をテーマにして、SWOT分析をする方法を紹介しています。

場面決めたいことの例(目指す方向を入れる)表に書く範囲
事業計画書を作る前地域の飲食店向けの仕事を、これから3年の柱にするか会社全体
新しい商品・サービスを考えるとき低糖質の商品を、健康志向の人に向けて出すかその商品・サービス
採用がうまくいかないとき経験者ではなく、未経験の若手を採って育てるか働く場としての会社
広告を始める前急ぎの試作の注文を、広告で取りにいくか広告で売りたい商品・サービス

場面が変われば、表に書く範囲も変わります。会社全体の表を1枚作って、すべての場面で使い回すと、どの場面にも少しずつ合わない表になります。SWOT分析は、決めたいことが変わるたびに、その範囲で書き直すものです。

表を書くのは、経営者と、その場面を担当している人です。自社のことは、自社の人がいちばんよく知っています。中小機構は、強みを見つける方法として、顧問税理士や経営指導員などの支援者に聞くことも勧めています。事業計画書を作る場面なら、書いた表を商工会や商工会議所の経営指導員などに見てもらうと、自分たちでは気づきにくい強みや弱みが分かることがあります。

先に「何を決めるためのSWOT分析か」を決める

第3章で見たように、SWOT分析で決めたいことは、場面によって変わります。ところが、分析を始めると、決めたいことを確かめないまま表を埋めてしまいがちです。決めたいことを書かずに4つの欄を埋めても、どの打ち手を選ぶべきかは判断できません。

Wikipediaは、SWOT分析で避けるべき誤りの1つ目に、次の項目を挙げています。

目標を定めて同意をとる前にSWOT分析を行う。そのような分析結果には意味がない。

出典:Wikipedia「SWOT分析」(回避すべき誤り)

なぜ目標が先なのか。同じ記事は、強みと弱みについて〈ある目標についての強みは、別の目標についての弱みとなる可能性がある〉と書いています。

たとえば「少人数で、小回りが利く」という特長を考えてみます。急ぎの小口の試作を柱にしたいなら、これは強みです。大量生産の注文を柱にしたいなら、人手が足りないという弱みになります。同じ特長でも、どちらを目指すかが決まらないうちは、どちらの欄に書くかが決まりません。

同じ特長でも、目標によって強みにも弱みにもなる 少人数で、 小回りが利く 目標:急ぎの小口の 試作を柱にする 目標:大量生産の 注文を柱にする 強み すぐに動ける 弱み 人手が足りない 目指す方向が決まらないうちは、どちらの欄に書くかが決まらない
図3:同じ特長が、目指す方向によって強みにも弱みにもなる例。強みと弱みが目標で変わるという考え方は Wikipedia「SWOT分析」から。例は筆者が作った。

SWOT分析は、目指す方向を入れて、何を決めるための分析かを一文で書いてから始めます。 「急ぎの小口の試作を、来年の柱にするかを決める」のように書いて、表のいちばん上に置きます。「来年、どの商品に力を入れるか」のように方向が入っていない書き方だと、図3のように、同じ特長をどちらの欄に書くかが決まりません。目指す方向の候補が2つ3つあるなら、候補ごとに表を分けます。候補がまだないときは、まず候補を探すために、会社全体の状況を1枚の表に書きます。強みと機会の組み合わせから候補を出したら、それぞれについて表を作り直します。Wikipediaも、書いた表から目標が達成できないと判断したら、別の目標でやり直すとしています。

私は、環境をつかむ工程からマーケティングの設計、実行までを、次の順番で考えています。

会計・財務の把握 → 3C分析 → VRIO → SWOT分析 → STP・4P → 実行

VRIOは強みが本物か(顧客が選ぶ理由になっていて、競合がすぐにはまねできないか)をふるいにかける工程、STP・4Pは誰に・何を・どう届けるかを決める工程です。この順番で進めると、目指す方向は、前の工程の3C分析ですでに一文になっています。その一文には、顧客にとって大事な困りごとで、競合が十分に応えられておらず、自社なら応えられるものを書きます。3C分析の記事では、この一文を「戦略仮説」と呼んでいます。SWOT分析は、その一文を目指す方向として置き、成り立つかどうかを4つの欄で確かめる工程です。3C分析をまだしていなくても、SWOT分析から始めて構いません。その場合は、目指す方向の一文を自分たちで書いて置きます。3C分析の進め方と、その一文の作り方は、3C分析の記事で解説しています。

関連記事3C分析は、埋めた後に何を確かめるかで決まる【テンプレート付き】

4つの欄の書き方:外から先に、事実で書く

目標を書いたら、4つの欄を書いていきます。書く順番は、外部の機会・脅威が先で、内部の強み・弱みが後です。

4つの欄は、目標を書いてから、外部から先に書く 1 目標を書く 目指す方向を入れて 何を決めるかを一文で 2 機会・脅威 外部から先に 市場・競合・顧客の変化 3 強み・弱み 確かめられる事実で 顧客の行動・数字 4 掛け合わせる 強み×機会の 一文に絞る 自社の特長が強みになるかは、市場の状況に照らして決まる。だから外部を先に見る
図4:SWOT分析の4つの欄を書く順番。目指す方向を入れた目標を一文で書いてから、外部、内部、掛け合わせの順に書く。外部の要因を先に見る並べ方は Wikipedia「SWOT分析」が TOWS として紹介している。順番は筆者の整理。

外部から書くのは、自社の特長が強みになるかどうかを、市場の状況に照らして判断するためです。先に強みを書くと、自社が売りたいものを前提に、市場を都合よく読んでしまいがちです。外部の要因を先に見る並べ方は、TOWSという呼び名でも紹介されています(Wikipedia「SWOT分析」)。

機会と脅威は、社会全体の変化と、自社に近い業界や市場の変化の2つから探します。社会全体の変化として見るのは、政治・経済・社会・技術の動きです。法律の改正、景気や金利、人口や暮らし方の変化、新しい技術の登場などがあります。政治(Politics)・経済(Economy)・社会(Society)・技術(Technology)の頭文字を取って、PEST分析と呼ばれる見方です。自社に近い変化としては、市場の大きさや伸び方、競合・顧客・取引先の動きを見ます。業界の競争の強さを整理するファイブフォース分析も、この変化を調べる道具の1つです。使えれば役に立ちますが、必須ではありません。

強みと弱みは、そのあとに書きます。ここで気をつけたいのは、思っていることではなく、確かめられる事実で書くことです。「技術力がある」「対応が早い」は、自社の強みとしてよく挙げられる言葉です。ただ、書いた本人には実感があっても、その言葉だけでは、ほかの人が確かめられません。「この3年、取引先の8割が契約を更新している」「見積もりを当日中に返している」のように、顧客の行動や数字で書くと、機会や脅威と掛け合わせて、具体的な打ち手を考えやすくなります。機会と脅威も同じで、「市場が伸びている」ではなく、何がどれだけ伸びているかを書きます。材料は、自社の問い合わせや受注の記録、取引先や顧客から聞いた話、業界団体や国が公表している統計などです。確かめきれていない項目は、推測だと分かるように印を付けて書いておき、掛け合わせる前に確かめます。

第3章の表の「広告を始める前」の場面で言うと、私は、Web広告の運用を始める前に、5つの分析をしています。SWOT分析、ファイブフォース分析、既存顧客の傾向の分析、競合の分析、それに、これまでに出してきた自社の広告の分析です。なかでも特に重視しているのは、既存顧客の傾向と競合の動きです。いまの顧客がどんな会社で、何をきっかけに問い合わせてきたのか。競合がどんなキーワードで検索結果に出て、どんな広告を出しているのか。ほかの4つの分析で分かったことが、SWOT分析の強みと機会の欄を事実で書く材料になります。広告の運用を外部に依頼するときは、こうした分析にも対応してもらえるかを、事前に確かめておくと安心です。

4つの欄は、外部から先に、確かめられる事実で書きます。 外部の調べものは、検索結果や業界の資料など、公開されている情報を見るところから自社で始められます。市場や顧客を本格的に調べるなら、調査会社や支援者に頼むこともあります。

この順番(目標→機会・脅威→強み・弱み→掛け合わせ)で書けるExcelのテンプレートは、第8章「SWOT分析のテンプレート」からダウンロードできます。

中小企業の強みは、事業が続いている事実から見つける

3C分析から順に進めている場合は、3C分析の自社の欄に挙げてVRIOでふるいにかけた強みを、SWOT分析の強みの欄に引き継ぎます。ここでは、SWOT分析から始める場合の強みの探し方を説明します。

4つの欄のうち、中小企業でいちばん手が止まりやすいのが強みの欄です。「うちには、特別な強みなんてない」と感じる経営者の方は少なくありません。中小機構も、同じ言葉をよく聞くと書いたうえで、こう続けています。

しかし、何年も何十年も事業が続いているという事実があるならば、「強みがない」ということはありえません。

出典:中小企業基盤整備機構『マンガでわかる「SWOT分析」』

事業が続いているのは、顧客が何かを理由に選び続けてきたからで、その理由が強みの候補です。 強みが思いつかないときは、自分たちで考え込むより、顧客・競合・社員や支援者の見方を借ります。中小機構は、次の3つの見方を挙げています。

強みは、顧客・競合・社員や支援者の見方から探す 顧客に聞く なぜ頼んでくれたのか なぜ取引を続けているのか 競合と比べる 店・商品・ホームページを見て 何が違うのか 社員・支援者に聞く うちの強みはどこか 部署ごとに違うか 強みの候補:顧客がそれを理由に選んでいるかで確かめる 選んでいる側の答えが、強みの候補になる
図5:強みを見つける3つの見方。3つの見方は中小企業基盤整備機構『マンガでわかる「SWOT分析」』から。確かめ方は筆者の整理。

1つ目は、顧客に聞くことです。「なぜ、うちに頼んでくれたのか」「なぜ、取引を続けてくれているのか」を、経営者や営業の担当者が、取引先や顧客に直接聞きます。アンケートでも構いません。返ってくる答えは、社内で思っていた強みと違うことがあります。たとえば技術を強みだと思っていたのに、顧客は「相談したときの返事が早いから」と答える、ということが起こります。第5章では、「対応が早い」と書くだけでは、ほかの人が確かめられないと説明しました。一方、顧客から「返事が早いから選んでいる」と聞けたなら、顧客に選ばれている理由として強みの欄に書けます。新しいサービスを考える場合は、その理由が、新しいサービスで想定する顧客にも当てはまるかを確かめます。

2つ目は、競合と比べることです。顧客が自社を選ぶ理由を知るには、競合との違いを見ることも欠かせません。競合の店や商品、ホームページを見て、自社と何が違うのかを確かめます。競合も変わっていくので、一度で終わらせず、ときどき見直します。見つけた違いが、顧客が実際に比べた競合に対しても違いになっているかを、図にして確かめる方法は、ポジショニングマップの記事で解説しています。

3つ目は、社員や支援者に聞くことです。営業・製造・経理では、見えている強みが違います。「うちの会社の強みはどこか」を部署ごとに聞くと、思わぬ答えが返ってくることがあります。なお、社員になぜこの会社で働き続けているのかを聞くと、働く場としての強みも見えてきます。こちらは、第3章の表の「採用がうまくいかないとき」の場面で使います。社員に聞いて、働く人に選ばれる理由を見つける進め方は、採用ブランディングの記事で解説しています。

関連記事採用ブランディングとは?社員の経験から「選ばれる理由」を見つけ、一貫して伝える

さらに、競合が同じくらいの費用をかければ、その強みにすぐ追いつけるかも確かめます。簡単にまねできるかどうかは、その強みを長く生かせるかを判断する目安になります。その判定のしかたは、3C分析の記事の「Companyに書いた強みが本物かを判定する」の章で解説しています。

書いた一覧を、強み×機会の一文に絞って次へ渡す

4つの欄が埋まると、仕事が終わったように感じます。ところが、SWOT分析で作った表は、そのあとの検討で使われないことがあります。Wikipediaは、1997年と1999年の研究が〈後に誰も戦略の後期段階で(SWOT分析の)出力を使用しなかった〉ことを示唆した、と紹介しています(Wikipedia「SWOT分析」・制限事項と対策)。

表が使われないのは、表が状況の一覧のまま、次の工程に渡されるからです。一覧を受け取った人は、そこから何をすればよいのかを、もう一度考え直すことになります。そこで、書き終えた表から、次の工程に渡す一文を作ります。

まず、内部と外部を掛け合わせます。強み・弱みと、機会・脅威を組み合わせると、4つの方向が出てきます。この掛け合わせは、クロスSWOT分析と呼ばれます。

組み合わせ考えること
強み×機会(積極化)強みを生かして、機会をどう取りにいくか
強み×脅威(差別化)強みを使って、脅威をどう切り抜けるか
弱み×機会(改善)機会を逃さないために、弱みをどう補うか
弱み×脅威(防衛・撤退)脅威の影響を、どう小さくするか

このとき、書いた項目を、掛け合わせる前に消さないことが大切です。Wikipediaは、SWOTの項目を早い段階で取り除かず、その項目からどんな戦略が生まれるかで重要性を判断することも書いています。書くときは多めに書き、掛け合わせたあとで、目標に照らして打ち手を生まない組み合わせを外していきます。

会社の規模が小さいほど、4つの方向を全部追うのは難しくなります。中小機構も、経営資源に乏しい小規模企業は、全方位の戦略をとるのが難しいとしたうえで、「強み×機会」を最優先に考えるよう勧めています。ほかの3つの方向で出た打ち手は消さずに表に残しておき、強み×機会の打ち手を進めるなかで必要になったときに戻ります。売上の落ち込みへの備えなど、守りを決めるためのSWOT分析なら、弱み×脅威の組み合わせから同じように一文を作ります。

書いた一覧を、強み×機会の一文に絞って次へ渡す 書いた項目 4つの欄に 多めに書く 掛け合わせる 強み・弱み× 機会・脅威 目標に照らす 打ち手を生まない 組み合わせを外す 強み×機会の一文 どの強みを、 どの機会に生かすか STP・4Pへ 誰に・何を・ どう届けるか 小規模な会社は強み×機会を最優先にする。ほかの3つの方向で出た打ち手も表に残しておく
図6:書いた一覧を、強み×機会の一文に絞って STP・4P に渡す流れ。小規模な会社が強み×機会を最優先にする考え方は中小企業基盤整備機構『マンガでわかる「SWOT分析」』から。流れは筆者の整理。

次の工程に渡すのは、「どの強みを、どの機会に生かすか」を書いた一文です。 たとえば「この1年で急ぎの小口の試作の問い合わせが増えているので、当日中に見積もりを返せる速さを生かして、急ぎの試作の注文を受ける」のような形です。この一文があれば、次の工程で、誰に向けて、何を、どう届けるかを決められます。STP・4Pと呼ばれる工程です。テンプレートの記入例のシートには、架空の会社で、目標から4つの欄、掛け合わせ、この一文まで続けて書いた例を載せています。

強み×機会の打ち手が複数出たときは、最初に書いた「何を決めるためのSWOT分析か」にいちばん直接答えるものを選びます。それでも複数残るときは、競合がすぐにはまねできず続けられるか、いまの人手と資金で始められるかを比べます。選んだ一文を、弱み・脅威の欄と照らし合わせます。実行を妨げるほど大きな弱みや脅威がなければ、目標の問い(たとえば「急ぎの小口の試作を、来年の柱にするか」)に「進める」と答えられます。妨げるもの(たとえば人手や資金の不足)がある場合は、弱み×機会や弱み×脅威から考えた打ち手で、目標の期限までに手当てできるかを見ます。手当てできるなら進め、できなければ目標を見直して表を作り直します。「進める」と答えた打ち手が、いまとは違う市場や商品に広げるものなら、どの市場・どの商品から広げるかを決める方法は、アンゾフの成長マトリクスの記事で解説しています。

この一文は、会社が選ばれる理由を決める土台にもなります。SWOT分析の4つの欄を埋めて終わりにせず、自社のどの強みを、市場のどの機会に生かすかを一文にしておくと、広告やホームページで何を伝えるかも決めやすくなります。採用をテーマに分析した場合は、採用の発信にも一貫した軸を持たせられます。選ばれる理由を決めて伝えていく考え方は、ブランディングの記事で解説しています。

関連記事ブランディングとは、選ばれる理由を決めて発信し続けること

一文に絞り、目標の問いに答えるのは、経営者と担当者が自社で行う作業です。

SWOT分析のテンプレート

自社で書くときに使えるように、この記事の手順に沿ったSWOT分析のテンプレート(Excel)を用意しました。ファイル1つに、次の5つのシートが入っています。

  • 使い方:書く順番と、それぞれのシートで何を書くか
  • 1_SWOT:目標の欄と、機会・脅威・強み・弱みの4つの欄。外部から先に書く順に並べている
  • 2_絞る:4つの欄を掛け合わせる表と、「残す一文」、次の工程に渡す「誰に・何を・どう届けるか」の欄
  • 3_記入例_SWOT・4_記入例_絞る:架空の部品加工会社で、目標から残す一文、誰に・何を・どう届けるかまで書いた例
テンプレートの中心は、書くシートと絞るシートの2枚 SWOT分析シート ① 目標 ② 機会 ③ 脅威 ④ 強み ⑤ 弱み 出典:ARROWS(arrowsdc.jp) 掛け合わせる 掛け合わせて、一文に絞る 目標 強み×機会 強み×脅威 弱み×機会 弱み×脅威 残す一文 次へ渡す(STP・4P) 出典:ARROWS(arrowsdc.jp) 1_SWOT:4つの欄を書く 外部(機会・脅威)から先に、事実で 2_絞る:一文に絞って渡す 強み×機会を「残す一文」に書く
図7:SWOT分析のテンプレート(Excel)のシート「1_SWOT」と「2_絞る」。ほかに「使い方」と、記入例のシート2枚が入っている。

目標の欄から順に埋めていけば、次の工程に渡す一文まで、1つのファイルで書き終えられます。 書き方に迷ったら、記入例のシートと見比べてください。

SWOT分析のテンプレート(Excel)をダウンロードする

※登録や個人情報の入力は要りません。クリックすると、Excelのファイル(SWOT分析テンプレート.xlsx)がダウンロードされます。

「残す一文」をもとに打ち手を始めたら、効いているかを何の数字で確かめるか、数字が動かないときに打ち手を変えるか一文を見直すかは、KPIの記事で解説しています。このテンプレートで書いた「残す一文」は、KPIのテンプレートの一文の欄にそのまま写せます。

関連記事KPIとは?意味と決め方、数字を見るだけで終わらせない置き方【テンプレート付き】

ARROWSのブランディング

第7章の最後で、強み×機会の一文は、会社が選ばれる理由を決める土台にもなると書きました。一文に絞るのは自社の作業ですが、その先の、選ばれる理由を決めて言葉と見た目にし、伝え続けるところは、ARROWSのブランディングで頼めます。事業の強みと狙う顧客を整理し、選ばれる理由を決めてから、見た目に進みます。

どの集客の施策から始めるかまで決めたいときは、マーケティングコンサルティングと組み合わせられます。マーケティングコンサルティングでは、施策を選ぶ前に、強みの源泉(VRIO)、自社と市場の状況(SWOT)、狙う顧客と立ち位置(STP)の順に整理します。この記事のSWOT分析は、その2つ目にあたります。

まとめ

SWOT分析は、4つの欄を埋めて終わらせず、次の打ち手を決めるために使う道具です。まず、目指す方向を入れて何を決めるための分析かを一文で書き、外部、内部の順に事実で書きます。そのうえで、どの強みをどの機会に生かすかを一文に絞り、次の工程に渡します。

まずは、「急ぎの小口の試作を、来年の柱にするかを決める」のように、いま決めたいことを一文で書いてみてください。それから機会と脅威、強みと弱みの順に書き、最後に「どの強みを、どの機会に生かすか」を一文にします。第8章のテンプレートを使うと、この順番で書けます。