目的に応じてツールを使い分ける
検索ボリュームの調べ方を探すと、さまざまなツールが見つかります。ただし、ツール名だけを並べても、それぞれ何に向いているのかは分かりにくいものです。ここでは、目的別に整理して紹介します。
検索数の目安を知りたいとき。 Googleキーワードプランナーと、aramakijakeです。キーワードプランナーはGoogle広告のアカウントと支払い情報の登録が必要で、登録だけの状態で何が出るかは次の章に書きました。
候補のキーワードを集めたいとき。 ラッコキーワードやruri-coです。検索窓に入力すると下に出てくる候補や、一緒に検索されているキーワードが一覧で確認できます。ここは候補を増やす段階なので、良し悪しは決めません。集めた候補をどう並べて1本に決めるかは、別の記事に書いています。
上位を取る難しさや、他社の状況を見たいとき。 UbersuggestやAhrefsです。難易度の指標は、どちらもそのツールの中だけで通じる点数です。Googleが出しているものではありません。
時期による動きを見たいとき。 Googleトレンドです。ここで出てくるのは、期間内でいちばん多かった時点を100としたときの比なので、「先月何回検索されたか」は分かりません。上がっているか下がっているかを見るツールです。
自社のサイトで起きたことを見たいとき。 Search Consoleです。自社サイトが検索結果に表示されたキーワードと、その表示回数を確認できます。これだけは他社の推定ではなく、自社のサイトで実際に起きたことの記録です。ただし取れるのは自社の分だけで、まだ表示されていないキーワードは出てきません。
ここに挙げたツールの多くは、複数の用途に使えます。上の分類は機能ごとに分けたものではなく、利用する目的に合わせて整理したものです。
私は、検索数の目安を直接確認するときにはキーワードプランナーを使っています。この記事に出てくる数字も、第6章で有料のツールと比べた分のほかは、すべてそこから取りました。次の章から、キーワードプランナーにどのような数字が表示されるのかを見ていきます。
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キーワードプランナーでは、検索数がこう表示される
キーワードプランナーを利用できるようになるまでの手順は、次のとおりです。
- Google広告のアカウントを作る
- ビジネスの名前とURLを入れる
- キャンペーン(広告)は作らずに進む。Googleも、キャンペーンを作成せずにアカウントを作成できると書いている
- 支払い情報を入れて、アカウント設定を完了する
- 設定が終わると、キーワードプランナーが使えるようになる
費用の扱いは、上のQ&Aに書きました。
ここまで済ませてキーワードを入れると、検索数はこう出ます。
- 100〜1000
- 10〜100
どちらも下から上まで10倍の開きがあります。私が調べた11のキーワードでは、出てきたのはこの2種類でした。
詳しい数字が出るのは、広告を配信しているアカウントのほうです。どの条件を満たすと詳しい数字が表示されるのかは、Googleから公表されていません。私が確認できたのは、支払い情報を登録しただけのアカウントでは範囲で表示され、広告を配信しているアカウントでは詳しい数字が表示された、というところまでです。
では、詳しい表示値は、その範囲のどこに位置していたのでしょうか。同じ11のキーワードを両方のアカウントで調べて、並べてみました。
範囲表示だけでは、詳しい位置は分からない
「100〜1000」と表示された6つのキーワードについて、詳しい表示値は次のとおりでした。
140/170/320/390/480/480
1000に届いたものは1つもなく、いちばん小さいものと大きいもので3.4倍の開きがありました。画面では、どれも同じ「100〜1000」と表示されています。
「10〜100」と出た5つも同じで、詳しい数字は20/30/50/70/70でした。こちらも3.5倍の開きがあります。
つまり、上限の1000を目安にすると多く見積もりすぎます。かといって、「100〜1000なら500くらいだろう」と範囲の中央を目安にすることもできません。この6つは、すべて500未満でした。
※ 範囲表示と詳しい数字は、同じ日に取り直したものではありません(取得日は図の下に書きました)。表示される値は次の章に書くとおり一定の刻みになっているので、11日の間に、一部の値が隣の刻みへ動いた可能性はあります。ただ、6つとも500未満という並びが変わるほどではないと見ています。
広告を配信しても、正確な回数は分からない
では、広告を配信すれば正確な回数が分かるのか。そうではありませんでした。
私の手元にあるキーワードプランナーのダウンロードデータは、全国分だけで26ファイル・17,808行あります。そこに記録されている検索数を集計したところ、表示値は0を含めて39種類しかありませんでした。
小さいほうから並べると、こうなります。
0/10/20/30/40/50/70/90/110/140/170
50までは10刻みです。50から110までは20刻みになり、110を超えると、隣り合う値の比はおおむね1.2倍になります。320の次は390、720の次は880、3600の次は4400。
間隔そのものは、数が大きいほど広くなります。ただしもとの数に対する割合で見ると、小さいほうが粗いままです。10の次が20なら2倍ですが、720の次の880は1.2倍しかありません。
ただし、この傾向を確認できたのは、あくまで手元のデータの範囲です。もっと大きいところでは、40500の次が90500という2倍以上あいた区間もありました。中間の値を持つキーワードが手元に無かっただけかもしれないので、Googleがどんな刻みを用意しているかまでは、ここからは言えません。言えるのは、出てきた値のあいだには、表示されない差があるということです。
したがって、画面に「720」と表示されても、実際に720回検索されたとは限りません。実際の数がそのまま表示されるのではなく、一定の範囲が「720」という値に丸められていると考えるのが自然です。
ここまでが、データで確かめたことです。ここからは推測になりますが、いちばん小さい値が0で次が10という並びから考えると、数回しか検索されていないキーワードも「10」と表示されている可能性はあります。そうだとすると、小さい数字ほど実際より大きい側に寄ることになります。
丸めが入っていること自体は、Googleも書いています。キーワードプランナーの予測について説明したヘルプページの、英語版の一文です。
Your search volume statistics are rounded. This means that when you get keyword ideas for multiple locations, the search volumes might not add up as you’d expect.
(Google 広告ヘルプ「キーワード プランナーの予測について」の「過去の指標に関する注意事項」・2026年9月19日参照。このページは項目が折りたたまれているので、開かないと本文が出てきません)
私の訳では「検索ボリュームの統計は丸められています。そのため、複数の地域でキーワード候補を取得したとき、検索ボリュームは期待どおりには足し合わさらないことがあります」となります。日本語版はここを「検索ボリュームのデータは概数です」と訳していて、丸めという言葉は使っていません。
後半の「足し合わさらない」が、次の章の話です。
市や町の数字を足したら、県全体の4倍になった
数字を足したときに、実務で問題が出ました。
クライアントの案件で、1つのキーワードについて市や町ごとの検索数を調べて合計したところ、県全体で取った数字の4倍になりました。しかも足したのは6つの市だけで、県の全部ではありません。一部を足しただけで、全体を超えています。自社のサイトでも、市区町村ごとに数字を取って足すときは同じことが起きます。
計算を間違えたわけではありません。地域を細かく分けるほど1件あたりの数は小さくなります。第4章のとおり、小さい数字ほど割合では刻みが粗いので、6つ分を足しただけでこれだけずれたのは、その丸めの積み重なりだと見ています。ただし、丸めだけで4倍もの差を説明できるかは検証していません。そのため、原因については推測にとどまります。確かなのは、一部を足した数字が全体を超えたという事実のほうです。
それ以来、丸められた数字を扱うときは、次の2点に注意しています。
- 丸めた数字は合計しない
- 資料に載せるときは、丸めが入っていることを注記する
合計したくなるのは、たいてい市場の大きさを見せたいときです。ただ、丸められた数字を足し合わせると、誤差が積み重なります。県全体の数字が必要なら、市町村ごとの数字を足すのではなく、県を指定して取り直すほうが確かです。
前の章で引用した「複数の地域で取得したとき、期待どおりには足し合わさらない」は、おそらくこのことを指しています。私の場合は、それを4倍という形で見ました。
有料のツールを使うと、何が変わるのか
ここまでは、キーワードプランナーで見える数字の話でした。では、有料のツールを使えば、より正確な検索数が分かるのでしょうか。少なくとも、私が比較した範囲ではそうではありませんでした。
キーワードプランナーと有料のツールで、同じ139のキーワードの検索数を突き合わせています。数字が一致したのは49、食い違ったのは90でした。しかも、どちらが大きいかはキーワードごとに入れ替わり、有料のツールのほうが大きいものが56、キーワードプランナーのほうが大きいものが34です。片方のツールが常に大きい、という関係にはなっていませんでした。
※ 両方のツールに数字があるキーワードだけを、それぞれの最新の取得値で突き合わせています。データの取得は2026年9月9日〜16日、集計は9月18日です。
突き合わせた結果は、どちらが大きかったかまで記録に残しています。次に同じキーワードを調べたとき、前と何が変わったのかが分かるからです。
有料のツールを加えても、検索数の正解が1つに定まるわけではありません。比較できる推定値が、もう1つ増えるだけです。
有料のツールの利点は、検索数の詳しさよりも、ほかの判断材料が増えることにあります。そのキーワードで上位を取るのがどれくらい難しいか、他社がどのキーワードで上位にいるか、といった材料のほうです。新しいキーワードや地域を限定したキーワードでは、数字を取得できるツールも異なります。私が見た範囲では、新しいキーワードは有料のツールでは検索数が0と出るのに、難しさの数値は出てくることがありました。地域を絞ったものは、国単位で集計しているツールでは取れず、キーワードプランナーでしか出ないこともあります。
検索数を知るだけなら、有料のツールは要りません。有料のツールが役立つのは、検索数を確認したあとの判断です。
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範囲表示でも判断できること
広告を配信していないアカウントでは、検索数は「10〜100」のような範囲で表示されます。それでも、判断材料として使えることはあります。
桁は分かります。「10〜100」と「100〜1000」は別の桁です。書くかどうかの判断は、多くの場合この粒度で足ります。ただし、表示が違うからといって必ず差が大きいとは限りません。私が調べた11のキーワードでは、「10〜100」と表示された5つのうちいちばん大きいものが70、「100〜1000」と表示された6つのうちいちばん小さいものが140でした。表示は違っても、2倍しか離れていません。
同じ表示の中では、順番が言えません。第3章のとおり、同じ「100〜1000」の中に140と480が混ざっています。範囲表示どうしを見比べて「こちらのほうが多い」と決めることはできません。
そして、範囲表示でも詳しい数字でも、その前に確かめたほうがよいことがあります。その数字が、何を数えたものかです。地名はとくに間違いが起きやすく、たとえば「浜松町」は東京都港区の地名です。静岡の浜松とは別の場所で、検索している人も別です。似た字面のキーワードを、自分が調べたいものだと思い込むと、まったく別の人の検索数を見ていることになります。
逆に、同じことを指しているのに書き方が違うと、今度は数字が分かれます。こちらについては、Googleがこう説明しています。
The average number of times people have searched for a keyword and its close variants based on the month range as well as the location and Search Network settings you selected.
(Google 広告ヘルプ「キーワード プランナーの予測について」の「過去の指標について」・2026年9月19日参照)
私の訳では「選んだ月の範囲、地域、検索ネットワークの設定にもとづいて、あるキーワードと、その類似パターンが検索された平均回数」となります。ただし、このページには、何を類似パターンと見なすかまでは書かれていません。広告を配信するときの「類似パターン」は別のページで定義されていますが、この数字がどこまでを合わせて数えているのかは、その説明の中には出てきません。
そこで、手元のデータで1つだけ確かめました。カタカナで「ウェブ」と書いたものと、英字で「web」と書いたものが、1つにまとめて数えられているのか、別々に数えられているのかです。両方に数字があるのは62組で、そのうち検索数が同じだったのは15組、残りの47組は違う数字でした。いちばん開いていた組では17倍です。
※ 同じキーワードを、それぞれの最新の取得値で突き合わせています。両方に数字があるキーワードだけを対象にしていて、地域は全国です。
しかも、同じ数字だった15組のうち12組は「10」でした。第4章のとおり、出てくる値は0の次が10で、0と10のあいだに値はありません。検索数の小さいキーワードは、表示できる値が少ないぶん、同じ「10」になりやすくなります。別のキーワードどうしが同じ数字になること自体は珍しくないので、一致した組も、合わせて数えられている証拠にはなりません。
少なくとも「ウェブ」と「web」は、同じ意味で使われていても、ツール上では別々に集計される場合があります。送りがなやスペースの有無まで確かめたわけではないので、書き方の違い全般についてどうかは、ここからは言えません。
数字そのものを読み違えるより、その数字が何を数えたものかを読み違えるほうが、実際には起きやすいと思っています。
「0」と出たときも、そのまま受け取らないほうがよさそうです。「0」と表示される理由は、少なくとも2つ考えられます。実際にほとんど検索されていない場合と、ツール側に十分なデータがない場合です。画面に表示された数字だけでは、どちらなのか判断できません。とくに新しい言い回しでは、世に出てからツールが推定を出せるようになるまでに時間がかかります。その間、数字は0のまま、検索は実際に起きています。私はまず、ツール側に十分なデータがない可能性を考えます。ただし、これは実測による結論ではなく、これまでの経験にもとづく判断です。
もう1つ、同じ画面の隣に出ている数字があります。キーワードプランナーの「競合性」は、そのキーワードに広告を出したい広告主がどれくらいいるかを示すもので、検索結果で上位を取る難しさではありません。もともと広告を出すかどうかを決めるための画面なので、並んでいる指標も広告の側のものです。読み違えたときに何が起きるかは、別の記事に書いています。
関連記事SEO対策は自分でどこまでできるか。作業の前に決めることがある
ARROWSのSEOコンサルティング
第7章の最後で、キーワードプランナーの「競合性」は、検索結果で上位を取る難しさではないと書きました。上位を取れそうかは、検索結果を開いて確かめます。ARROWSのSEOコンサルティングでは、検索数のほかに、検索上位のページ、AIによる要約の引用元、競合サイトの構成まで調べてから、狙うキーワードを決めます。
調べた結果をもとに、キーワードごとに、問い合わせにつながる見込みと、すでにある記事と狙いが重ならないかを確かめ、書く記事を絞り込みます。
まとめ
第2章で取り上げた「100〜1000」という表示に戻ります。その中身は140かもしれませんし、480かもしれません。
検索ボリュームを調べること自体は難しくありません。大切なのは、表示された数字をそのまま事実として受け取らず、どこまで判断材料にするかを見極めることです。
- 支払い情報を登録しただけなら、「10〜100」「100〜1000」のような範囲で表示される。その範囲のどこに詳しい表示値があるかは、範囲表示だけでは分からない
- 詳しい数字が出るのは、広告を配信しているアカウント。どこからが境目かは公表されていない
- その詳しい数字も丸めてある。手元のデータでは39種類の値しか出てこなかった
- 丸めた数字は合計しない。足した結果が全体を超えることがある
- 0は「検索されていない」とは限らない
- 範囲表示でも桁は分かる。ただし同じ表示の中の大小は、比べられない
- その数字が何を数えたものかを先に確かめる。似た字面の別のキーワードを調べていることがあり、同じキーワードでも書き方が違うと数字が分かれる
- 有料のツールを入れても、検索数は正確にならない
そして最後に、数字では決められないことが1つあります。そのキーワードを打ち込んだ人が、自社のお客さんかどうかです。検索数が月に数十しかないキーワードでも、その数十のほとんどが見込み客なら、月に数千検索される一般的なキーワードより価値があります。ここだけは、ツールのどの列にも出てきません。




