事業の競合と、検索の競合は別もの
競合サイト分析で最初に起きやすいのが、事業上の競合と検索上の競合の取り違えです。
普段「競合」と呼んでいるのは、同じ商品やサービスを売っている会社です。検索結果に並ぶのは、それとは限りません。狙うキーワードで実際に検索すると、まったく別の業種のサイト、大手の比較メディア、公的機関のページ、ツールを売っている会社のサービスページが混ざって出てきます。そのキーワードで実際に競合するのは、検索結果に並んでいるサイトです。
逆のこともあります。事業では最も意識している相手が、検索結果にはいない。その会社が検索に力を入れていないだけかもしれませんし、別のキーワードで入っているのかもしれません。どちらにしても、その相手を見ても、いま狙っているキーワードで上位に入るための材料は得にくいでしょう。
だから分析の対象は、キーワードごとに選び直します。「自社の競合3社」と決めて全部のキーワードに当てはめると、ほとんどのキーワードで相手を間違えます。
誰と比べるかで、結果の半分が決まる
競合として見るサイトは、目的に応じて次の3つに分けられます。
1つ目。狙うキーワードで検索して、上に出てくるサイト。SEO上の競合として見るべきなのは、このサイト群です。ここを取り違えると、後の工程がすべてずれます。
2つ目。同じ商品やサービスを扱っている会社。必ずしも検索上の競合とは限りませんが、何を書いているか、どんな言葉づかいをしているかは参考になります。
3つ目。参考にしたいサイト。同業でなくてもかまいません。構造や見せ方を借りる相手です。
この3つは役割が違うので、混ぜません。混ぜると「相手が強すぎて勝てない」と「相手のやり方が参考になる」が同じ表に並び、判断ができなくなります。この記事で以降見ていくのは、1つ目だけです。
もうひとつ、実務で効く注意があります。商材が変わったら、競合も選び直すことです。私は以前、ある商材で作った競合の一覧を、近い別商材にもそのまま使いました。結果は「この領域には競合がいない」という判定でしたが、実際にはその領域専用のページを持つ会社が何社もありました。競合がいないように見えたのは、見ている相手が違っていたからです。
何を見るか。順番をつける
私は次の5つを見ます。
- 検索結果での順位。そのキーワードで、誰が何位にいるか
- 相手が上位に入っているキーワード。1本の記事ではなく、サイト全体でどんなキーワードから人が来ているか
- 被リンク。ほかのサイトから、その相手のページに張られているリンク。数だけでなく、どのサイトから紹介されているかを見る。ここは自分の目だけでは追いにくいため、ツールが要る(第4章)
- 中身と構造。どのような見出し構成になっているか、どこまで具体的に説明しているか、内部リンクがどこへ張られているか(関連する記事やサービスのページへつないでいるか)
- 更新の様子。いつ書かれ、いつ直されているか
ツールが出す「相手のアクセス数」は、ここに入れていません。推定値なので、順番の比較には使えても、見る項目として毎回並べるものではないと考えているからです(第5章)。相手がそのキーワードにどれだけ手を掛けているかは、5つ目の「更新の様子」に出ます。
ただし、この5つに入る前に見るものがあります。検索結果そのものの顔ぶれです。並んでいるのが記事なのか、サービスページなのか、ツールそのものなのか、比較メディアなのか。これを先に見ないと、1〜5を全部調べたあとで「そもそも入れないキーワードだった」と気づくことになります。
調査は、①比べる相手を決める、②検索結果の顔ぶれを見る、③記事で入れる枠を数える、④個別のサイトを調べる、という順で進めます。数え方は第6章に書きました。
個別のサイトを開いたあとにも、見る順番があります。先に構造、あとから文章です。何章あるか、どの順で並べているか、どこに内部リンクを張っているか。ここは短時間で書き出せて、比較もできます。書き出した構造は、比べるためのもので、そのまま自社の設計図にするものではありません。文章の巧拙は最後です。読み比べても差が出にくく、時間だけがかかります。
もうひとつ、相手の記事を読むときに先に見ておくと効くものがあります。その記事が、何を根拠に書いているかです。公式の資料を引いているか、自社の実測を出しているか、それとも他の記事の言い直しか。記事の根拠が薄ければ、同じ検索結果に入る余地があります。逆に、取材や独自調査が記事の核になっている相手には、似た構成の記事を作るだけでは追いつきにくいと見ています。
無料でできることと、有料ツールが必要なこと
無料でできること。検索結果を開いて顔ぶれを見る。上位のページを読む。見出しと構造を書き出す。自分のサイトがどのキーワードで表示されているかを、Search Consoleの「検索パフォーマンス」で見る。クエリを表示回数の多い順に並べると、いま自社がどのキーワードで見られているかが分かる。競合分析の大部分は、無料で確認できる範囲だけでも進められます。
有料ツールが必要なこと。第3章で挙げた被リンクの調査と、相手のサイト全体がどのキーワードから流入を得ているかの調査です。どちらも、複数のキーワードをまとめて調べる場合に必要です。1つのキーワードを見るだけなら、ここまで全部無料でできます。
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競合の数字は、どこまで信じてよいか
「競合の月間アクセス数」「この相手はこのキーワードで何位」といった数字を、SEOツールなどで見かけます。有料のツールが出したものなら、それは推定値です。私が使っているツールのヘルプにも、推定値だと明記されています。
Googleは、外部のSEOツールについて公式のページを出しています。競合分析の話として書かれたものではありませんが、そのまま当てはまる一文があります。英語版から引きます。
Some third-party services provide data that some users of those tools misinterpret as somehow being from Google.
(Google 検索セントラル「Google Search’s guidance on using third-party SEO tools, services, and advice」・英語版・2026年9月18日参照)
私の訳では「一部のサードパーティーサービスはデータを提供していますが、そのデータをGoogleが提供したものだと誤解する利用者もいます」となります。日本語版もほぼ同じ言い方で、こちらは「一部のツールユーザーが Google からのものと誤解するような」と訳されています。
この注意が特に当てはまるのが、競合サイトの数値を見る場面です。相手のアクセス数も、相手が上位に入っているキーワードも、Googleが公開しているものではありません。
競合サイトについてツールが示す数値は、相対的な強弱を見るために使います。「この相手のほうが多い」「このキーワードでは順位が高い」といった相対比較には使えます。一方で、「相手が月にこれだけ来ているから、うちも同じだけ取れるはず」という絶対値の当てはめは成り立ちません。推定値を目標に変えると、届かなかったときに何が原因か分からなくなります。
「社」ではなく「枠」で数える
枠で数えることは、個別のサイトを開く前の段階でいちばん効きます。
競合分析では、比較対象を「3社」「5社」と会社単位で数えがちです。実際に効くのは会社の数ではなく、その検索結果に自社が入れる枠がいくつあるかです。
この記事でいう枠は、ひとつの検索結果の中で自社のページが入れる場所のことです。(キーワード選定の記事にも「枠」が出てきますが、あちらは2つの意味で使っています。ひとつはこの記事と同じ、検索結果の中で記事が入れる場所。もうひとつは、サイト全体で書ける記事の本数です。この記事で扱うのは前者です。)
検索結果の最初のページに並ぶのは10件ほどですが、その全部が記事とは限りません。ツールやサービスそのもののページ、比較メディア、動画、公的機関のページが混ざります。記事で上位表示を狙うなら、数えるべきなのは「記事の枠」です。
この記事の対象キーワードである「seo 競合 分析」を例にします。「seo 競合 分析」で検索すると、分析ツールを売っている会社のサービスページが上位に入り、さらに同じ会社が運営する別のページも並んでいます。同じ会社のページが、記事の枠と、それ以外の枠に1件ずつ並んでいる状態です。
別のツール会社は、記事ではなく機能の紹介ページで入っていました。そのサイトには同じテーマの記事もあって、いまも消えていません。記事が残っていても、検索結果に出ているのが機能紹介ページなら、その行は記事の枠ではありません。
(これは2026年9月19日の並びです。顔ぶれは動きます。いま検索して違っていても、それが「動いた」のかどうかは、同じやり方で2回測らないと分かりません。第7章で書きます。)
数え方は、次の3段です。
- 10件のうち、記事はいくつか。上から1件ずつ開いて、記事かそうでないかを分けます。これが記事で狙える枠の数
- 残りは何が埋めているか。ツールそのもの、サービスページ、比較メディア、動画、公的機関
- 同じ会社が複数の行を持っていないか。ページの種類は問わず、1社として数える
3でページの種類を問わないのは、同じ会社のページが複数並んでいる場合、その会社がそのキーワードに力を入れている可能性が高いからです。自社も、そのキーワードで同じ会社と正面から競うことになります。
数えるのは自分の目で足ります。並んでいるページを開いて、記事かサービスページかを見るだけです。ここで効くのは、タイトルだけで判断しないことです。ページタイトルにサイト共通の定型文が付いていると、サービスページが記事のように見えることがあります。見出しを見れば分かります。記事なら見出しが中身の説明になっていて、サービスページなら「機能」「料金」「無料で試す」といった見出しが並びます。
順位は、見た日のもの
競合分析の結果は、見た日の状態です。当たり前のことに見えますが、記録を残すときには抜けやすい点です。
順位は動きます。Googleの更新でも動きますし、相手が記事を直しても動きます。1週間前に取った並びを前提に企画を立てて、書き上がった頃には顔ぶれが変わっている、ということが普通に起きます。
検索するときは、ログアウトするかシークレットモードにして、履歴の影響を避けます。それは取り方をそろえる話で、ここで書いているのは取ったあとの話です。取り方をそろえても、日が違えば結果は違います。
だから、記録するときはいつ見たかを一緒に残します。私は、調べた日付と、そのとき何件のうち何件がどの型だったか、まで書いて残しています。日付の無い記録は、半年後に見たときに使えません。
残すのは日付だけではありません。どうやって取ったかも一緒に残します。この記事を書くにあたって、第6章で扱った検索結果を2回記録しました。1回目はツールで取得し、2回目は自分で検索して記録しました。8日あいだが空いていて、顔ぶれは違っていました。ただ、この2つを並べて「動いた」とは言えません。取り方が違うので、差が8日間の変化なのか、取り方の違いなのかを分けられないからです。言えるのは、2回目に見た並びがこうだった、ということだけです。
同じことは、ツールを入れ替えたときにも起きます。去年の数字と今年の数字を比べる前に、どちらも同じ取り方かを確かめてください。
そして、一度確認した状態を、その後もずっと有効な前提として使わないことです。大きな判断をする前には、もう一度検索し直すほうが早いです。
出口は「見送る」判断
競合を調べ終えると、発想は「足す」方向に向きがちです。相手が書いていて自社に無い記事を足す。相手より詳しく書く。被リンクを増やす。どれも正しいのですが、それだけだと分析の意味が半分になります。
競合を見て分かるのは、勝てる場所だけではありません。勝てない場所のほうが、はっきり分かります。
私は、次のどれかに当たったら、そのキーワードは外します。4つとも、検索結果から自分でたどって確かめられます。
- 記事の枠がほとんど無い。上位がツール・サービスページ・比較メディアで埋まっている
- 自分と同じ立場の会社が1社も入っていない。並んでいるのが大手や専門メディアだけなら、その検索結果では、記事の内容だけでなく、サイトの知名度や運営規模が順位に強く影響している可能性があります。記事の中身を増やすだけでは届きにくいでしょう。確かめるのは、並んでいるサイトの会社概要です。拠点の数、社員数の記載、上場の有無を見ます
- 入っている記事が、自社では用意できない材料でできている。第3章で見た「何を根拠に書いているか」が、ここでは外す条件になります。記事を開いて、数字・写真・発言の出どころを見る。たとえば、自社で行った調査、自分たちで撮影した写真、取材相手の実名などが、記事の核になっている場合です。自社にも同等の材料があるかを確認します。いま手元になく、これから集める必要があるなら、そのキーワードは外す候補です
- そもそも読者が違う。上位記事の末尾の導線が、問い合わせや資料請求ではなく、求人応募や講座の申込みに向けられている
このうち1・2・4は、キーワードを選ぶ段階でも同じものを見ます。実際にどのキーワードを外したかは、キーワード選定の記事のほうに書いています。ここでは、外すと決めたあとの話をします。
関連記事キーワード選定のやり方。数字で絞ったあと、何を見て決めるか
外した理由は、この4つのどれに当たったかで書き残します。条件の番号で残しておくと、半年後に顔ぶれが変わったときに、どの条件が消えたかだけを見れば戻せます。理由を文章で残すと、次に読むときに当時の判断を読み直すところから始まります。番号なら、その条件がいまも成立しているかを見るだけで済みます。
外すのは「あきらめる」とは限りません。同じテーマでも、業種・地域・状況などの条件を加えたキーワードへ切り替える方法があります。上位が大手で埋まっている広いキーワードでも、業種や地域や状況を足すと顔ぶれが変わることがあります。記事を増やすのではなく、限られた制作工数を別のキーワードに振り向けるということです。
そして、外すのは負けではありません。
これは検索に限った話ではありません。前に、会社の営業戦略を考える立場で、商圏をどこまで広げるかを決めたことがあります。広げるときは、「東京の企業はお金がある」「都市部なら企業の数が多い」と期待したくなります。けれど私が見てきた範囲では、どこかの地域の中小企業だけが特別に儲かっている、ということはありませんでした。中小企業を取り巻く市場や競争の構造を考えると、地域を変えるだけで競争の少ない市場が見つかるケースは、ほとんどありません。地元で勝てないなら、新天地を求めても勝てない。そう考えて、まず地元を強くするほうに寄せました。遠方へ営業に出れば、交通費などのコストがかかるだけでなく、移動中は担当者の実務時間も失われます。
ただしこれは、人が動いて売る場合の話です。オンラインで商圏を全国に広げ、各地の企業と競いながら成果を出せるのであれば、この限りではありません。
どちらにも共通しているのは、手が有限だということです。検索でも同じで、書ける本数は限られています。候補から外すキーワードを決めれば、そのぶん有望なキーワードに時間を使えます。競合分析がいちばん効くのは、この配り直しのところです。
反対に、やってはいけないのは「相手より長く書く」で乗り切ろうとすることです。枠が無いところに長い記事を足しても、枠は増えません。増えるのは自社の作業だけです。
ARROWSのSEOコンサルティング
ARROWSのSEOコンサルティングでも、記事を書く前に、狙うキーワードの検索結果を開き、上位に並ぶページと競合サイトの構成まで調べます。比べる相手は、第2章でいう1つ目、そのキーワードの検索結果に並ぶサイトです。検索結果にAIによる要約が出る場合は、その引用元が上位のページとどう違うかも見ます。
調べた結果からは、書かない記事も先に決めます。見るのは、問い合わせにつながる見込みと、すでにある記事との役割の重なりです。第8章の4つと同じではありませんが、書かない記事を先に決める点は同じです。第8章で、地域などの条件を足すと顔ぶれが変わると書きました。地域名を入れなくても、検索した場所の近くの会社が上位に出るキーワードもあり、そうしたキーワードでは、狙う範囲を地域にするか全国にするかも決めます。
まとめ
競合サイト分析の手順そのものには、決まった形があります。競合を選び、項目を見て、結果に活かす。
差がつくのは、前と後ろです。
- 前:誰と比べるかを、キーワードごとに選び直す。商材が変われば競合も変わる
- 前:個別のサイトを調べる前に、検索結果の顔ぶれを見る。数えるのは会社ではなく、自社が入れる枠
- 後:ツールの数字は推定。順番の比較には使えるが、目標の数値にはしない
- 後:結果は見た日のもの。日付と取り方を一緒に残し、古い観察を前提に使い続けない
- 後:出口に「見送る」を置く。勝てないキーワードを外して、残ったキーワードに手を回す
ここまでの見方は、このキーワードだけのものではありません。自社が狙っているほかのキーワードにも、同じ順で当てられます。
競合分析を、相手の良いところを探すために使っていると、調べるほど、やることが増えていきます。外す判断まで持ち帰ると、逆に減ります。減ったぶんは、勝てる場所に回せます。




