HubSpotとは

HubSpotとは、米国のHubSpot, Inc.が提供している、顧客の記録を中心にした製品です。日本語の画面があり、日本の窓口はHubSpot Japan株式会社です。

土台になるのは、お客さんの記録を管理するCRM(顧客関係管理)の部分です。HubSpotではこれをSmart CRMと呼び、その上に、マーケティング、営業、問い合わせの対応、Webサイトなどの機能のまとまりが乗っています。この機能のまとまりをHubと呼びます。

HubSpotは、記録(Smart CRM)の上にHubが乗る Marketing Hub フォーム・ メール Sales Hub 商談の管理 Service Hub 問い合わせの 対応 Content Hub Webサイト Data Hub データの連携 Revenue Hub 見積もり・ 支払い Smart CRM(お客さん・会社・取引の記録。無料ツールで始められる) どのHubを使っても、記録は同じCRMに入る
図1:HubSpotの構成。公式の製品・サービスのカタログ(2026年10月10日時点)をもとに筆者が整理。

CRM、営業の進み具合を管理するSFA、見込み客への発信を自動で行うMAは、別々の製品として売られていることもあります。HubSpotは、この3つを1つの製品の中でつなげて使えます。CRMとSFA・MAの違いは、CRMの記事で解説しています。

HubSpotには無料で使える範囲があり、HubSpotはこれを無料ツールと呼んでいます。有料のHubは、必要なものだけ選んで契約します。HubSpotは、お客さんの記録(CRM)を土台に、目的ごとの機能のまとまり(Hub)を足していく製品です。

HubSpotでできること

Hubごとに、主にできることは次のとおりです。画面の操作手順は、この記事では書きません。

Hub主にできること
Smart CRMお客さん・会社・商談の記録、やり取りの履歴、タスク
Marketing Hub問い合わせフォーム、メールの配信、見込み客への発信
Sales Hub商談の進み具合の管理、営業のメールや日程調整
Service Hubカスタマーサポートの問い合わせの受付と対応の管理、よくある質問のページ、顧客満足度の調査
Content HubWebサイトやブログなど、コンテンツの作成と管理
Data Hubほかのツールとのデータの連携と整理
Revenue Hub見積もりや支払いなど、売上にかかわる手続き

記録の単位は、HubSpotでは「オブジェクト」と呼ばれます。中心になるのは、お客さん1人を表すコンタクト、会社、商談を表す取引、カスタマーサポートへの問い合わせを表すチケットの4つです。電話やメール、打ち合わせ、メモ、タスクは「アクティビティー」として、それぞれの記録にひも付けて残します。

どのHubを使っても、記録は同じCRMに入ります。フォームから来た問い合わせ、営業が送ったメール、受注した取引が、同じお客さんの記録にひも付いて並びます。HubSpotでできることは多いですが、どれも同じCRMの記録につながっているので、使うHubを増やしても記録は1か所にまとまります。

表のMarketing Hubにある「見込み客への発信」は、いまは買わない見込み客と連絡を続けるナーチャリングにも使われます。MAツールを入れる前に、断られた理由と次に連絡する日の記録からナーチャリングを始める方法は、ナーチャリングの記事で解説しています。

関連記事ナーチャリング(リードナーチャリング)とは?いまは買わない見込み客に、次に連絡する時期を決めて育てる方法

使うHubを選ぶより先に、見込み客を集めてから商談に進めるまでのうち、自社がどこから手を付けるかを決める方法は、BtoBマーケティングの記事で解説しています。

無料でできることと、その上限

HubSpotの無料ツールでは、記録の部分を中心に、次のことができます。

  • コンタクト・会社・取引の記録と、やり取りの履歴
  • タスク(誰が、いつまでに、何をするか)
  • 表(CSVやエクセルのファイル)の取り込み
  • 自分で作る項目(カスタムプロパティー)
  • 問い合わせフォームと、マーケティングのメール(月2,000通まで。どちらもHubSpotのロゴが入る)

ただし、無料ツールには上限があります。主なものは次のとおりです。

項目無料ツールの上限
使える人(ユーザー)2人まで
コンタクト1,000件まで
自分で作れる項目合わせて10個まで
取引の流れ(パイプライン)HubSpotが用意した1本だけ(仕事の種類ごとに分けられない)
表の取り込み1日50回まで
Eメールのテンプレート3件まで

※HubSpot公式の製品・サービスのカタログと料金ページを参照(2026年10月10日時点)。上限は変わることがある。

少ない人数で、お客さんの記録から始めるなら、無料の範囲で始められます。無料ツールは、記録を始めることはできる一方で、使う人数・コンタクトの件数・自分で作れる項目の数に上限があります。

料金と、有料にする目安

有料の料金は、使う人の数(シート)で決まります。プランは、Starter、Professional、Enterpriseの順に機能が増えます。

無料から有料にする目安は、前の章の上限に当たったときです。

  • 使う人が3人以上になった
  • コンタクトが1,000件を超えそうになった
  • 自分で作りたい項目が10個を超えた
  • 取引の流れを、仕事の種類ごとに分けたくなった

記録だけを3人以上で使いたいときは、記録の部分(Smart CRM)のStarterを、使う人の数だけ契約します。Starterでは、取引の流れを、ほかの記録の流れと合わせて15本まで作れます。自分で作れる項目は、記録の種類(コンタクト・会社・取引など)ごとに1,000個までに増えます。

料金は、2026年10月10日時点の公式ページで、Smart CRMのStarterが通常1シート(1人分)あたり月額2,400円です。3人で使うなら、通常は月額7,200円です。いまは新規契約者向けの期間限定の割引があり、割引の額はページによって違います(Starterの製品ページでは、1年分を一括で払う場合に1シートあたり月額840円、月払いの場合に1,200円)。申し込む前に、公式の料金ページで確かめてください。有料にするのは、無料ツールの上限に当たってからでよく、そのときも必要なHubと人数の分だけ契約します。

メリットと、気をつけること

HubSpotのメリットは、次の3つです。

  • 記録・営業・発信が同じ製品の中でつながっているので、ツールの間でデータを移し替えなくてよい
  • 無料で始められるので、記録の付け方を試してから有料にするかを決められる
  • 日本語の画面とヘルプがある

一方で、気をつけることもあります。

  • 機能が多いので、最初から全部のHubを使おうとすると、設定に時間がかかり、記録を始める前に止まりやすい
  • 無料ツールには、前の章の上限がある
  • ヘルプの日本語は機械翻訳のページがあり、画面の言葉と少し違うことがある

HubSpotは機能が多いぶん、初めは記録に使う範囲を絞ると、続けやすくなります。

Salesforceなど、ほかのツールとの違い

HubSpotと並んでよく名前が挙がるのが、Salesforceや、MAの製品のMarketoなどです。比べるときは、機能の一覧を並べるより、CRM・SFA・MAが1つの製品にまとまっているか、別々の製品をつないで使うかを見ると、違いがつかみやすくなります。HubSpotは、お客さんの記録(Smart CRM)を土台に、どのHubも同じ記録を使う形です。Salesforceは、営業(Agentforce Sales)・問い合わせの対応(Agentforce Service)・マーケティング(Agentforce Marketing)を別々の製品として用意し、必要なものを同じ基盤の上で組み合わせる形です。少ない人数の会社向けには、これらを1つのアプリにまとめたStarter Suiteもあります。

1つの製品にまとまっていれば、記録が1か所に集まり、つなぐ手間がかかりません。別々の製品をつなぐ形は、それぞれの機能を深く使える代わりに、つなぎ込みと、どちらの記録を基準にするかを決める手間がかかります。

料金や機能の範囲は、製品の構成やプランで変わります。比べるときは、それぞれの公式の料金ページで、自社の利用人数と必要な機能に合うプランを確認します。ほかのツールと比べるときは、記録が1つの製品にまとまるかどうかと、自社の人数で料金がいくらになるかを見ます。

いまの表の項目は、HubSpotのどこに入るか

ここからは、いまエクセルやスプレッドシートで付けている顧客の表を、HubSpotに移すときの話です。メールや名刺に分かれている分は、先に表にまとめておきます。CRMの記事では、ツールを選ぶ前に記録する項目として、次の5つを挙げ、ツールに移すときは、表の列をそのまま項目として作れるか、いまの表を取り込めるかを確かめる、と書きました。この章と次の章は、その答えをHubSpotで当てたものです。

  • どこで知ったか
  • 何を頼みたかったか
  • 結果と比べた相手
  • 決め手と失注の理由
  • 次に誰がいつ連絡するか

この5つをHubSpotに移すと、入れる先は3つに分かれます。HubSpotにすでにある項目、タスク、自分で作る項目(カスタムプロパティー)です。例に使うのは、CRMの記事と同じ、急ぎの小口の試作を請け負う部品加工会社(架空)の表です。問い合わせ1件を1行に書き、列に上の5つの項目を並べています。この表のD社の行を例にどこに入るかを当てると、次のようになります(「次の連絡」だけは、記入のあるG社の行です)。

表の列表に書いていた例HubSpotで入れる先種類
どこで知ったか検索自分で作る項目(ドロップダウン選択)自分で作る
何を頼みたかったか試作の部品10個自分で作る項目(複数行テキスト)自分で作る
結果失注取引ステージ(「成約」「失注」)すでにある
比べた相手3社と比べた自分で作る項目(単行テキスト)自分で作る
決め手と失注の理由ほかの会社のほうが価格が安かった「成約の理由」「失注の理由」すでにある
次に誰がいつ連絡するか受けた人が10月15日に電話タスクの「割り当て先」と「期限」タスク

「どこで知ったか」は、HubSpotにも「オリジナル トラフィック ソース」という項目があり、自動で入ります。ただ、これはWebサイトにどこから来たかを記録するもので、紹介や展示会、電話で知った経緯は、自分で入れない限り残りません。表で付けてきた「どこで知ったか」をそのまま残すなら、自分で作る項目にして、選べる値を表と同じにしておきます。

自分で作る項目は、この表では3つです。無料ツールで作れる10個の中に収まります。いまの表の5つの項目は、HubSpotにすでにある項目、タスク、自分で作る項目に分かれて入り、この例では、自分で作る項目は3つです。

表で何を記録するかの決め方と、ツールに移す目安は、CRMの記事で解説しています。

関連記事CRMとは?意味と、ツールを選ぶ前に決める記録の項目【テンプレート付き】

取り込む前に決めること

表とHubSpotでいちばん違うのは、記録の単位です。表では1行に1件の問い合わせをまとめて書いていましたが、HubSpotでは、その1行がコンタクト(お客さん側の担当者)、会社、取引(その問い合わせで相談された仕事)の3つの記録に分かれます。表に入れてきたのは仕事の相談なので、取引に入れます。受注したあとの質問や苦情は、取引ではなく、チケット(カスタマーサポートへの問い合わせ)の側の記録です。

表の1行は、コンタクト・会社・取引の3つに分かれる 表の1行 (問い合わせ1件) 担当者名・メールアドレス 会社名・ドメイン名 何を頼みたかったか 結果・理由・比べた相手 次に誰がいつ連絡 コンタクト 担当者名 メールアドレス 会社 会社名 会社のドメイン名 取引 何を頼みたかったか・結果 成約/失注の理由・比べた相手 タスク:割り当て先・期限 メールアドレスと ドメイン名で 3つをつなぐ 取り込みとは 分けて手で作る
図2:表の1行をHubSpotに取り込むときの分かれ方。部品加工会社(架空)の表の列で、筆者が整理。

1つのファイルで、コンタクト・会社・取引を一度に取り込むこともできます。同じ行に書いたコンタクト・会社・取引は、お客さん側の担当者のメールアドレスと会社のドメイン名を目印に、互いにひも付いて取り込まれます。メールアドレスは同じ人を、ドメイン名は同じ会社を見分けるためのもので、すでにHubSpotにある人や会社と同じ値なら、新しく作らずに、その記録を表の値で更新します。

記録が2つできるのは、次のようなときです。同じ人から2回問い合わせが来て表に2行あるときは、取り込み方で「作成と更新」を選べば、コンタクトは1つのまま、取引だけが2つできます。2回の問い合わせは別々の仕事の相談なので、取引が2つになるのが正しい形です。一方で、メールアドレスが空いている行は人の記録が、ドメイン名が空いている行は会社の記録が、つながらずに別々になったり、2つできたりします。取引にはこうした目印が無いので、同じ表を2回取り込むと、取引も2つずつできます。

取り込む前に決めておくことは、次の4つです。

  1. 表の列を、コンタクト・会社・取引のどれの項目にするかを決める(例:お客さん側の担当者名・メールアドレス・電話番号はコンタクト、会社名は会社、どこで知ったか・何を頼みたかったか・結果・比べた相手・理由は取引)
  2. 自分で作る項目を、先にHubSpotで取引の項目として作っておく。ドロップダウンの値は表と同じにする
  3. お客さん側の担当者のメールアドレスと会社のドメイン名の列を足して埋める(CRMの記事の表には無い列です。ドメイン名は、会社のWebサイトの「example.com」の部分だけを書き、「https://」や「www.」は付けません)
  4. 経過の列(CRMの記事の表で、話したことを日付をつけて書き足していた列)を、取引のメモとして取り込むかを決める。取り込まない列も決めておく

取り込みの画面では、表の列ごとに、入れる先の項目(HubSpotプロパティー)を選びます。使わない列は「列をインポートしない」を選べば、取り込まれません。取り込めるファイルは、CSVとエクセル(.xlsx・.xls)で、シートは1枚、1行目に列の名前が要ります。

経過の列をメモにするときは、取り込みで「詳細インポート」を選び、取り込むものにメモを加えて、経過の列を「メモの本文」に割り当てます。メモは取引にひも付き、日付の列を割り当てなければ、取り込んだ日の日付になります。目印が空いていて同じ人や会社の記録が2つできたときは、取り込んだあとで見つけしだい、2つの記録を1つにまとめる「マージ」で直します。マージは無料ツールでも使えますが、元には戻せません。

「次に誰がいつ連絡するか」をタスクにするときは、表の取り込みとは分けて考えます。取り込みでタスクを作ることもできますが、作ったタスクを取り込みで直すことはできません。件数が少ないうちは、取り込んだ取引を開いて、自社の担当と期限を確かめながら、タスクを手で作るほうが確かです。取り込む前に、表の各列をコンタクト・会社・取引のどれの項目にするかを決め、つなぐためのメールアドレスと会社のドメイン名をそろえておきます。

少ない人数なら、無料のCRMで記録から始める

人数が少ない会社で、HubSpotのHubを最初から全部使おうとすると、設定に時間を取られて、記録が続かないことがあります。最初は、無料ツールにいまの表の記録を移し、日々の記録に使うところから始めます。移すときは、まず数件だけ取り込みます。取り込んだ取引を開いて、コンタクトと会社がひも付いているか、自分で作る項目に値が入っているかを見て、問題が無ければ残りを入れます。残りを入れるときは、試した行を表から外しておきます(そのままだと、取引が2つずつできます)。移した日からは表には書き足さず、HubSpotにだけ書きます。表は、HubSpotから書き出して数えるときに使います。

少ない人数なら、記録から始めて、上限に当たってから足す 1 表の記録を移す 無料ツールで、 コンタクト・会社・取引に 2 書く人とタイミング 表のときと同じ 分け方で決める 3 困ってから足す 人数・件数・項目の 上限に当たったら 足す目安:使う人が3人以上/コンタクトが1,000件を超える/ 自分で作る項目が10個を超える/取引の流れを分けたい
図3:少ない人数でHubSpotを始める順。筆者の整理。

記録を移したら、問い合わせを受けた人がコンタクトと取引を作り、結果が出たら自社の担当が取引ステージと理由を入れる、と分けておきます。表の「受けた人」は、HubSpotでは取引の「取引担当者」に入ります。誰がいつ書くかは、表で続けてきた分け方をそのまま使えます。

見込みの金額の数え方も、HubSpotに置き直せます。CRMの記事でも書いたとおり、私が関わった仕事では、表計算で見込みの金額を数えるとき、受注できそうな度合いに応じて、見積もりの金額の一部だけを足していました。HubSpotでは、取引ステージごとに「取引確度」(成約の見込みの割合)が付いていて、用意されたステージでは「成約」が100%、「失注」が0%になっています。見込みの金額に確度を掛けた合計(加重金額)も、取引のボード表示で見られます。表で取引ごとに付けていた度合いは、HubSpotではステージごとの割合になります。

人数やHubを足すのは、第3章の上限に当たってからにします。入れた問い合わせに誰も連絡していなかったときは、Hubを足す前に、タスクと、誰がいつまでに連絡するかの決め方を見直します。

ARROWSでもHubSpotを使っていて、取引の流れ(パイプライン)のステージを自社の仕事の流れに合わせ、見込み・受注・納品で追っています。少ない人数なら、無料ツールでいまの表の記録を移すところから始め、上限に当たってから人数やHubを足します。

集めた問い合わせに、誰がいつまでに連絡するかの決め方は、BtoBのリード獲得の記事で解説しています。

関連記事BtoBのリード獲得とは?施策の選び方と、成果の比べ方

ARROWSのHubSpot導入支援

第9章のとおり、記録だけなら無料ツールで始められます。メールの配信や分析まで使いたいときは、ARROWSのHubSpot導入支援をご覧ください。導入支援は、顧客の台帳・メールの配信・分析が使えるプランから始めます。

第7章・第8章で挙げた、表の列をどの記録の項目にするか、自分で作る項目、取引ステージは、使う目的と使う人に合わせて一緒に決めてから、HubSpotに設定します。記録の登録もお受けします。エクセルなどの一覧は、同じ人の情報が重なっていないか、会社名の表記がばらついていないかを確かめ、整えてから登録します。名刺しかない場合は、お預かりしてスキャンし、登録します。

第9章で触れた見込みの金額は、取引ステージごとの割合を会社に合わせて設定し、見込み額や受注額を担当者ごとに自動で集計できるところまで整えます。サイトの問い合わせフォームから届いた問い合わせが、HubSpotに登録されるようにする設定も、導入支援に含みます。

まとめ

HubSpotとは、お客さんの記録(CRM)を土台に、マーケティング・営業・問い合わせの対応などの機能をまとめた製品です。記録の部分は無料ツールで始められ、上限に当たったら、必要なHubと人数の分だけ有料にします。

まずは、いま付けている顧客の表の列を書き出して、HubSpotにすでにある項目、タスク、自分で作る項目のどれに入るかを分けてみてください。そのうえで、表の各列を、コンタクト・会社・取引のどれの項目にするかを決め、つなぐためのメールアドレスと会社のドメイン名がそろっているかを確かめてから取り込みます。